「ん?」
マグカップに口を付けていたあずまさんは、その姿勢のまま声を発した。
「実は、繊細な絵の雰囲気とお名前から、お目にかかるまでは勝手に女性だと思い込んでいたんですよ」
だからあずまさんの正体を知った時、驚きも倍増だったのだ。
「もちろん、男性で『綺羅』でも全然おかしくはないですから、すぐに納得できましたけど」
「ええ、ズバリそのミスリードが狙いですから」
あずまさんはしてやったり、という感じの笑顔を浮かべながら解説した。
「徹底的に素性を隠したかったので本名は問題外でしたし、そしてどうせペンネームを使用するなら、性別もあやふやにしておきたいという考えもあって、あえて中性的なものにしたんですよ」
「オレは、見事にその作戦に引っ掛かったうちの一人って事ですね」
そこであずまさんは苦笑いを浮かべた。
「何だか大仰な字を使ってて、こっ恥ずかしい気持ちもあるんですけどね」
「いや、そんなことは…」
「でも、言い訳をさせてもらうと、何もない所から発想した訳ではないんですよ?本名のアナグラムですから」
「あなぐらむ?」
「ええ。まず、自分の名前をアルファベット表記にして……」
「あ、はいはい。アナグラム。文字列の順番を入れ替えて、別の単語を作るってやつですよね?」
「そうそう、それです。『AZUMARIKI』で色々試して『AZUMIKIRA』が出来上がったので、そこに『安曇綺羅』という漢字を当てはめた訳ですね。もうこの際、思いっきりハジけてみようと」
「耽美な感じで良いじゃないですか。あずまさんの絵のタッチに、すごくマッチしてると思いますよ」
オレは正直な感想を述べた。
だけど、こんな裏話が聞けるなんて、すっごくラッキーで贅沢な時間を過ごしちゃったな。
諦めずにインタビューを続けてみて良かった。
「そういえば…。あずまさん、ご自分の作品を部屋に飾ったりはしないんですか?」
残っていたコーヒーをすべて飲み干したあと、ふと気になり問い掛けた。
戸がぴっちり閉まっているのでリビングの隣の部屋がどうなっているかは分からないけど、とりあえず目が届く範囲内にはあずまさんの絵は見当たらなかった。
というか、そもそも壁には一切の装飾物がなく、とてもシンプルな室内である。
「いやいや、しませんよ。ナルシストみたいで恥ずかしいじゃないですか」
マグカップに口を付けていたあずまさんは、その姿勢のまま声を発した。
「実は、繊細な絵の雰囲気とお名前から、お目にかかるまでは勝手に女性だと思い込んでいたんですよ」
だからあずまさんの正体を知った時、驚きも倍増だったのだ。
「もちろん、男性で『綺羅』でも全然おかしくはないですから、すぐに納得できましたけど」
「ええ、ズバリそのミスリードが狙いですから」
あずまさんはしてやったり、という感じの笑顔を浮かべながら解説した。
「徹底的に素性を隠したかったので本名は問題外でしたし、そしてどうせペンネームを使用するなら、性別もあやふやにしておきたいという考えもあって、あえて中性的なものにしたんですよ」
「オレは、見事にその作戦に引っ掛かったうちの一人って事ですね」
そこであずまさんは苦笑いを浮かべた。
「何だか大仰な字を使ってて、こっ恥ずかしい気持ちもあるんですけどね」
「いや、そんなことは…」
「でも、言い訳をさせてもらうと、何もない所から発想した訳ではないんですよ?本名のアナグラムですから」
「あなぐらむ?」
「ええ。まず、自分の名前をアルファベット表記にして……」
「あ、はいはい。アナグラム。文字列の順番を入れ替えて、別の単語を作るってやつですよね?」
「そうそう、それです。『AZUMARIKI』で色々試して『AZUMIKIRA』が出来上がったので、そこに『安曇綺羅』という漢字を当てはめた訳ですね。もうこの際、思いっきりハジけてみようと」
「耽美な感じで良いじゃないですか。あずまさんの絵のタッチに、すごくマッチしてると思いますよ」
オレは正直な感想を述べた。
だけど、こんな裏話が聞けるなんて、すっごくラッキーで贅沢な時間を過ごしちゃったな。
諦めずにインタビューを続けてみて良かった。
「そういえば…。あずまさん、ご自分の作品を部屋に飾ったりはしないんですか?」
残っていたコーヒーをすべて飲み干したあと、ふと気になり問い掛けた。
戸がぴっちり閉まっているのでリビングの隣の部屋がどうなっているかは分からないけど、とりあえず目が届く範囲内にはあずまさんの絵は見当たらなかった。
というか、そもそも壁には一切の装飾物がなく、とてもシンプルな室内である。
「いやいや、しませんよ。ナルシストみたいで恥ずかしいじゃないですか」

