「ん?でも…。元同僚の方達は、あずまさんの正体は知らないんですか?」
「いえ。店長と、一部のバイト仲間は知ってます。基本的に、よっぽど親しい友人以外には自分の本業は明かしていなかったんですが、どんどん仕事が忙しくなってきて、締め切りの関係でシフトの変更を願い出る事が多々あったので、さすがに秘密にしておくのが難しくなりまして」
「じゃあ、その中の誰かが家族や友達に「あの『愛のカナタ』の挿し絵を担当したイラストレーターは元バイト仲間で、今は常連になってる』とか言っちゃったりしたら…」
「昔より個人情報の取り扱いが厳しくなってますし、業務上知り得た情報を勝手に第三者に明かさないようにと、徹底的に指導がなされますからそれも無いハズです。比企さんの職場だってそうじゃないですか?」
「あ、それは確かにその通りなんですが…」
資料を借りるには必ず最初に利用者は住所氏名等のデータを開示してカードを作らなければならないんだから、図書館なんてそれこそ個人情報の宝庫だもんね。
それを口外するような事はもちろんしないけど……。
「まぁ、ダイレクトに住んでいる所や本名がバレる訳じゃないですし、深く考えずに口を滑らせてしまう、という可能性もなきにしもあらずですが」
「あ、そうそう。それが言いたかったんですよ。悪気はなくてもついウッカリ、って事もあるし」
「それを聞いた側が、別に俺のファンじゃなくても『話のタネに見てみるか』という考えに至る事は確かにあるかもしれません。でも、いざ俺に会うつもりでファミレスに行ったとして、そこにタイミング良く俺が来てるとは限らないし、来てたとしても、そもそも顔を知らないんだから大勢のお客さんの中から『安曇綺羅』を探し出すのはほぼ不可能ですよね。口を滑らせてしまった……という仮定の、知り合いの店員だってさすがにその時点で事の重大性に気付くでしょうから、「あの人がそうだよ」なんて気軽に暴露するとは思えません。だから、どっちみち俺には実害がないし、実際今までトラブルになった事はありませんよ」
「な、なるほど…」
思わず【証明終了】と言いたくなるような、理路整然とした解説だった。
「それに…そもそも、あずまさんの事を男性だと思っている人が、どれくらいいるかですよね」
「いえ。店長と、一部のバイト仲間は知ってます。基本的に、よっぽど親しい友人以外には自分の本業は明かしていなかったんですが、どんどん仕事が忙しくなってきて、締め切りの関係でシフトの変更を願い出る事が多々あったので、さすがに秘密にしておくのが難しくなりまして」
「じゃあ、その中の誰かが家族や友達に「あの『愛のカナタ』の挿し絵を担当したイラストレーターは元バイト仲間で、今は常連になってる』とか言っちゃったりしたら…」
「昔より個人情報の取り扱いが厳しくなってますし、業務上知り得た情報を勝手に第三者に明かさないようにと、徹底的に指導がなされますからそれも無いハズです。比企さんの職場だってそうじゃないですか?」
「あ、それは確かにその通りなんですが…」
資料を借りるには必ず最初に利用者は住所氏名等のデータを開示してカードを作らなければならないんだから、図書館なんてそれこそ個人情報の宝庫だもんね。
それを口外するような事はもちろんしないけど……。
「まぁ、ダイレクトに住んでいる所や本名がバレる訳じゃないですし、深く考えずに口を滑らせてしまう、という可能性もなきにしもあらずですが」
「あ、そうそう。それが言いたかったんですよ。悪気はなくてもついウッカリ、って事もあるし」
「それを聞いた側が、別に俺のファンじゃなくても『話のタネに見てみるか』という考えに至る事は確かにあるかもしれません。でも、いざ俺に会うつもりでファミレスに行ったとして、そこにタイミング良く俺が来てるとは限らないし、来てたとしても、そもそも顔を知らないんだから大勢のお客さんの中から『安曇綺羅』を探し出すのはほぼ不可能ですよね。口を滑らせてしまった……という仮定の、知り合いの店員だってさすがにその時点で事の重大性に気付くでしょうから、「あの人がそうだよ」なんて気軽に暴露するとは思えません。だから、どっちみち俺には実害がないし、実際今までトラブルになった事はありませんよ」
「な、なるほど…」
思わず【証明終了】と言いたくなるような、理路整然とした解説だった。
「それに…そもそも、あずまさんの事を男性だと思っている人が、どれくらいいるかですよね」

