「え?就職活動?」
オレは目をパチクリとさせた。
「て事はあずまさん、大学には進学しなかったんですか?」
「ええ。バリバリ高卒ですよ」
「そうだったんですか。てっきり美大か、もしくはデザイン専門学校を卒業してるのかと思ってました」
「まさか。それまで何の準備もしてなかったのに、美大なんて逆立ちしたって無理ですよ」
あずまさんは自嘲気味な笑みを浮かべつつ言葉を繋いだ。
「それに俺、金を掛けてまで学ぼうっていう気はサラサラなかったんです。あくまでも、独学で行ける所まで行ってみようって。それでもし絵を仕事にできるほどのレベルに到達できなかったとしても、それが自分の実力なんだから仕方ないと」
「へぇー。スゴイですね!」
そのストイックさに、オレは心底感動した。
しかもそういった思考は、少なくとも就職活動を始める17、8歳以前から持ち合わせていたって事だもんね。
若いうちから、周りの同年代よりもだいぶ精神年齢が高い人だったんだろうな、あずまさんて。
「もちろん、学びたい、同じ夢を持つ者達と切磋琢磨したい、という意志があって、それが可能な人が大学なり専門学校なりに進むのを、否定している訳ではないんですよ。どっちみち自分自身が描いて描いて描きまくって、努力し続けなければならない事に変わりはないですから」
「うんうん、その通りですよね」
「ただ、俺の場合はそういった方面に金を費やせるような余裕はなかったし、万一その輪の中に入り込めたとしても、それだけでもう何かを会得できたような錯覚に陥ってしまって、むしろ怠けてしまうんじゃないかと思ったんですよね」
「あ。それ、何となく分かります」
小学校1年生の時にそろばん教室に通う事になったんだけど、申し込みをして、そろばんを買ってもらった段階ですでに計算が得意になったような気分になったのを思い出した。
だけど、いざ習い始めたらあんまり興味が持てなくて、毎週毎週通うのがしんどくなって来てしまって、結局数年後、日商3級を取得した段階で「もうここまでやれば充分だよな」と辞めてしまった。
ちなみに父さんと兄ちゃんは段持ちである。
「でまぁ、最終的にはプロになれた訳だし、俺にとってはこの選択がベストだったんだなとつくづく実感しています」
オレは目をパチクリとさせた。
「て事はあずまさん、大学には進学しなかったんですか?」
「ええ。バリバリ高卒ですよ」
「そうだったんですか。てっきり美大か、もしくはデザイン専門学校を卒業してるのかと思ってました」
「まさか。それまで何の準備もしてなかったのに、美大なんて逆立ちしたって無理ですよ」
あずまさんは自嘲気味な笑みを浮かべつつ言葉を繋いだ。
「それに俺、金を掛けてまで学ぼうっていう気はサラサラなかったんです。あくまでも、独学で行ける所まで行ってみようって。それでもし絵を仕事にできるほどのレベルに到達できなかったとしても、それが自分の実力なんだから仕方ないと」
「へぇー。スゴイですね!」
そのストイックさに、オレは心底感動した。
しかもそういった思考は、少なくとも就職活動を始める17、8歳以前から持ち合わせていたって事だもんね。
若いうちから、周りの同年代よりもだいぶ精神年齢が高い人だったんだろうな、あずまさんて。
「もちろん、学びたい、同じ夢を持つ者達と切磋琢磨したい、という意志があって、それが可能な人が大学なり専門学校なりに進むのを、否定している訳ではないんですよ。どっちみち自分自身が描いて描いて描きまくって、努力し続けなければならない事に変わりはないですから」
「うんうん、その通りですよね」
「ただ、俺の場合はそういった方面に金を費やせるような余裕はなかったし、万一その輪の中に入り込めたとしても、それだけでもう何かを会得できたような錯覚に陥ってしまって、むしろ怠けてしまうんじゃないかと思ったんですよね」
「あ。それ、何となく分かります」
小学校1年生の時にそろばん教室に通う事になったんだけど、申し込みをして、そろばんを買ってもらった段階ですでに計算が得意になったような気分になったのを思い出した。
だけど、いざ習い始めたらあんまり興味が持てなくて、毎週毎週通うのがしんどくなって来てしまって、結局数年後、日商3級を取得した段階で「もうここまでやれば充分だよな」と辞めてしまった。
ちなみに父さんと兄ちゃんは段持ちである。
「でまぁ、最終的にはプロになれた訳だし、俺にとってはこの選択がベストだったんだなとつくづく実感しています」

