「それでも諦めず、一生懸命努力して、やっとの思いでその職に就く事ができた。高い競争率を勝ち抜いて得た仕事ですから、並々ならぬ誇りを持っているし、なおかつ公務員という肩書きもプラスされている」
あずまさんはそこで声での返事は止め、相づちで応えた。
「福利厚生がしっかりしているので、女性が仕事を続ける上でネックとなる結婚、出産、育児の時期もその公務員ならではの待遇の良さで無事に切り抜けられた。元々女性が圧倒的に多い職場ですから周りも理解を示し、温かく見守ってくれます。それほど恵まれた職場を定年前に去るなんて、そんなもったいない事、到底する気にはなれないですよね」
「なるほど。それで空きが出ないから、新人の入り込む余地がほとんどない、っていう先ほどの言葉に繋がる訳ですか」
「そうですそうです。それでも、毎年定年を迎える人は確実にいる訳で、昔はそれなりに採用されてはいたみたいなんですけどね。ある時期からガクッと減ってしまって、今や募集が出るのは奇跡に近いと」
「民間に委託してる図書館って、比企さんが働いてる所だけですか?」
「あ、いや。全国的にどんどん拡大して行ってますよ」
「ズバリそれが、ますます市の職員としての新規採用が減った、大きな要因の一つじゃなんじゃないんですかね?」
「ん?ん~。そうですねぇ。ただ、そういうシステムがなかったらオレが図書館に入り込めた可能性は皆無に等しいので…」
そこに異議を申し立てられる立場でもないんだよな~。
これぞまさしくジレンマというやつだ。
「あ、すみません。別に、各自治体のやり方、比企さんの会社を責めてる訳ではないんですよ」
あずまさんは慌てて自分の考えを述べた。
「様々な問題が浮上して来て、それを改善する為に業務委託という形になったんでしょうから。それらの諸事情を考慮せずに、好き勝手にケチをつけるほど、子どもじゃありませんので」
とは言っても、オレより4つも年下なんだよな。
なんか、年齢のわりにかなり思慮深いというか、達観してる部分があるんだよな、あずまさんて。
「あ。ところで、お時間の方は大丈夫なんですか?」
「え?」
「この時間にアパートに居るって事は仕事は休みなんでしょうけど、プライベートでどこか出かけるつもりだったんじゃないんですか?」
あずまさんはそこで声での返事は止め、相づちで応えた。
「福利厚生がしっかりしているので、女性が仕事を続ける上でネックとなる結婚、出産、育児の時期もその公務員ならではの待遇の良さで無事に切り抜けられた。元々女性が圧倒的に多い職場ですから周りも理解を示し、温かく見守ってくれます。それほど恵まれた職場を定年前に去るなんて、そんなもったいない事、到底する気にはなれないですよね」
「なるほど。それで空きが出ないから、新人の入り込む余地がほとんどない、っていう先ほどの言葉に繋がる訳ですか」
「そうですそうです。それでも、毎年定年を迎える人は確実にいる訳で、昔はそれなりに採用されてはいたみたいなんですけどね。ある時期からガクッと減ってしまって、今や募集が出るのは奇跡に近いと」
「民間に委託してる図書館って、比企さんが働いてる所だけですか?」
「あ、いや。全国的にどんどん拡大して行ってますよ」
「ズバリそれが、ますます市の職員としての新規採用が減った、大きな要因の一つじゃなんじゃないんですかね?」
「ん?ん~。そうですねぇ。ただ、そういうシステムがなかったらオレが図書館に入り込めた可能性は皆無に等しいので…」
そこに異議を申し立てられる立場でもないんだよな~。
これぞまさしくジレンマというやつだ。
「あ、すみません。別に、各自治体のやり方、比企さんの会社を責めてる訳ではないんですよ」
あずまさんは慌てて自分の考えを述べた。
「様々な問題が浮上して来て、それを改善する為に業務委託という形になったんでしょうから。それらの諸事情を考慮せずに、好き勝手にケチをつけるほど、子どもじゃありませんので」
とは言っても、オレより4つも年下なんだよな。
なんか、年齢のわりにかなり思慮深いというか、達観してる部分があるんだよな、あずまさんて。
「あ。ところで、お時間の方は大丈夫なんですか?」
「え?」
「この時間にアパートに居るって事は仕事は休みなんでしょうけど、プライベートでどこか出かけるつもりだったんじゃないんですか?」

