「シャンパンの空き瓶も、とりあえず一緒に入れちゃいますね。後でちゃんと分別しますから、大丈夫ですよ」

「うそ、良いの?」

「ええ。これくらいしかお手伝いできなくて申し訳ないですけど」

「そんな事ないよー。すごく助かるー」


吾妻さんのおかげでテーブルの上は瞬く間に片付いた。

ゴミはすべて引き受けてくれたし、鍋敷きや未使用の紙皿など、端の方にきちんと整頓して置いてくれている。


「ありがとう。後は一人で大丈夫だから」

「そうですか。それじゃあ、俺はそろそろおいとましますね」


言いながら、吾妻さんはダイニングチェアへと近付き、ダウンジャケットを手に取った。

少し遅れてオレも吾妻さんの傍らへと歩を進め、彼が上着を着込んだ所で一緒に玄関へと歩き出す。


「ホントごめんね?それ」

「いやいや、気にしないで下さいよ」


たたきに立つ吾妻さんが手に提げている、先ほどのゴミを指差しつつ改めて謝罪すると、彼は爽やかに笑った。


「比企さんはこの後引き続き片付けと、洗い物があるでしょ?ゴミ出しくらいは俺が担当しないと」

「ありがとね」

「……いや。それはこっちのセリフです」


吾妻さんはちょっと改まった口調になった。


「さっきはホント、ありがとうございました。あんな風に声を上げて泣いたの、覚えている限りでは初めての経験です。比企さんのおかげで、とてもすっきりしましたよ」


吾妻さんは言葉通り、晴れ晴れとした表情をしていた。


「いや、それはオレだって同じだよ~」


あのタイミングで、吾妻さんと一緒に泣く事ができて、オレも救われた。


「何かこう、心が浄化されたような気分なんだよね…」


実はほんの数時間前まで、聖くんがいなくなってしまったら、オレは一体どうなってしまうんだろうと危惧していたのだけれど…。


「これでまた明日から、頑張って生きて行けそうな感じ」

「…そうですね」


神妙に頷いてから、吾妻さんはふと気になったように問い掛けて来た。


「ところで比企さんは仕事はいつまでですか?」

「えっと、28日まで。そんで29日から新年3日まで、図書館自体が休館なんだ」

「という事は4日から通常通り?」

「うん。そんでその日がオレにとっての仕事始め」

「休み中何か予定はあるんですか?」