流しで砂糖菓子に付着している生クリームを洗い落とし、布巾で水気を取ってから、それぞれをラップで丁寧にくるむ。


「ほら。こうして、冷蔵庫に保管しておけばアリも寄って来ないでしょ?」


いつの間にやらダイニングまで歩を進め、カウンター越しにオレの動きを見守っていた吾妻さんに近付き、現物を見せながら解説した。


「こういうお菓子がいったいどれぐらいの期間、腐らずにもつものなのか分からないけど、限界まで手元に置いておこうと思うんだ」

「…じゃあ、俺もどっちか、いただいて良いですか?」

「あ、うん。もちろん。どっちが良い?」

「えっと…」


砂糖菓子を左手の平に乗せて差し出すと、吾妻さんはしばし悩んでから、トナカイの方を手に取った。


「こっち、もらっても良いですか?」

「うん。お互いに、大切にしようね」

「ええ」


吾妻さんは手の中のそれをいとおしそうに軽く握り締めて胸元に寄せると、そのままダイニングチェアに近付き、背もたれにかけておいたダウンジャケットのポッケにそっと仕舞った。

それを見届けた後、オレもサンタさんを冷蔵庫の卵を入れる場所に寝かせて置き、吾妻さんより少し遅れてリビングへと戻る。

その後、まだ残っていたすべての料理を胃に納め、一息吐いたあと、お互いがパーティーの為に出費した金額を報告しあった。

計算してみたら、二人ともだいたい同じ金額だったので、相殺はしない事になり、そして今日の所はこれでもうお開きにしよう、という流れになったのである。


「比企さんは明日も普通に出勤ですもんね」

「そうなんだよね~」


オレが鍋と包丁をキッチンへと運び、吾妻さんがテーブル上のゴミを片付けながら会話を交わす。


「すみません。何か袋ありますか?これ、まとめちゃうんで」

「あ、ちょっと待ってて」


とりあえず手にしていたブツを流しに置いて着け置き処理だけして、オレはカウンター下のダンボール箱からオードブルが入っていたビニール袋をピッキングすると、リビングへと戻った。


「これだけ大きければ全部入るよね」

「そうですね。これは俺が持ち帰りますから」


オレの手から袋を受け取り、一ヶ所にまとめたゴミを中にせっせと入れつつ吾妻さんが宣言した。


「え?」