「お待たせしてすみません。本日103号室に引っ越して参りました、比企翼と申します。よろしくお願いいたします」
そして手ぬぐいを差し出しながら、改めてご挨拶。
「え?ひき…?」
男性が不思議そうな顔をしたので慌てて解説した。
「あ、『ひきたすく』です。『ひき』はそこに書いてある通りで、『たすく』はつばさっていう字なんですけど…」
のし紙には名字しか書いてないし、焦って早口になっちゃったから良く聞き取れなかったようだ。
まぁ、たとえ下の名前が書いてあったとしても、漢字を見ちゃったらさらに混乱するだろうけど…。
今までの人生の中で、オレの名前を見て一発で「たすく」と読んだ人は一人もいない。
100%「つばさ」と読み間違えられて来た。
「へぇー。その字で『たすく』っていうんですね」
案の定、そこに食いついた後、男性は続けた。
「それと、もう一個気になったんですけど…」
「え?」
「もしかして、『ひき算』と『たし算』?」
「あ、そこ気が付いちゃいました?」
思わず苦笑しながら返答する。
「正解です。ウチの父が数字に深く関わる仕事をしてるんですが、自分の名前がたまたま「渡」だったもんだから『これはぜひとも子どもにも四則演算をもじった名前を付けなければ!』って、しょーもない使命感に燃えてしまったようで…」
今までも何度も説明して来たけど、つくづくこっ恥ずかしいエピソードだよなと思いつつ、ここで止めるのも何なので開き直って続けた。
「兄に『翔』と書いてかける、オレに翼と名付けたんですよ。まぁ一応、それぞれ未来に向けて大きく羽ばたいて行って欲しいっていう意味も込められてはいるみたいですけど」
「お父さんがわたる、お兄さんがかけるで『わり算』と『かけ算』か」
男性はそこで思わず、という感じでふっと笑みを溢した。
最初はとっつきにくい印象だったけど、笑うといきなり少年ぽい、人懐こい感じになる。
っていうか、実際若いんだろうけど。
身長は、177センチのオレより若干高いくらい。
前髪がもさっとオデコに覆い被さっている感じの黒髪の短髪で、黒縁メガネをかけている。
そして手ぬぐいを差し出しながら、改めてご挨拶。
「え?ひき…?」
男性が不思議そうな顔をしたので慌てて解説した。
「あ、『ひきたすく』です。『ひき』はそこに書いてある通りで、『たすく』はつばさっていう字なんですけど…」
のし紙には名字しか書いてないし、焦って早口になっちゃったから良く聞き取れなかったようだ。
まぁ、たとえ下の名前が書いてあったとしても、漢字を見ちゃったらさらに混乱するだろうけど…。
今までの人生の中で、オレの名前を見て一発で「たすく」と読んだ人は一人もいない。
100%「つばさ」と読み間違えられて来た。
「へぇー。その字で『たすく』っていうんですね」
案の定、そこに食いついた後、男性は続けた。
「それと、もう一個気になったんですけど…」
「え?」
「もしかして、『ひき算』と『たし算』?」
「あ、そこ気が付いちゃいました?」
思わず苦笑しながら返答する。
「正解です。ウチの父が数字に深く関わる仕事をしてるんですが、自分の名前がたまたま「渡」だったもんだから『これはぜひとも子どもにも四則演算をもじった名前を付けなければ!』って、しょーもない使命感に燃えてしまったようで…」
今までも何度も説明して来たけど、つくづくこっ恥ずかしいエピソードだよなと思いつつ、ここで止めるのも何なので開き直って続けた。
「兄に『翔』と書いてかける、オレに翼と名付けたんですよ。まぁ一応、それぞれ未来に向けて大きく羽ばたいて行って欲しいっていう意味も込められてはいるみたいですけど」
「お父さんがわたる、お兄さんがかけるで『わり算』と『かけ算』か」
男性はそこで思わず、という感じでふっと笑みを溢した。
最初はとっつきにくい印象だったけど、笑うといきなり少年ぽい、人懐こい感じになる。
っていうか、実際若いんだろうけど。
身長は、177センチのオレより若干高いくらい。
前髪がもさっとオデコに覆い被さっている感じの黒髪の短髪で、黒縁メガネをかけている。

