そういえば掃除が終わったあと、ラグの上にぼんやりと座り込んでいたもんな。

きっとあの段階で、すでに疲労困憊していたのだろう。


「あ。今、急いでお布団持って行くから。聖くんは隣のお部屋で待っててくれる?」

「うん」


聖くんはこっくりと頷き、絵本を抱えたまま「んしょ」と言いつつソファーを降りた。

目がとろんとしていて、体がゆらゆらと揺れていて、この状態で歩かせるのはかなり心配だったけれど、かといってオレには何もできない。

聖くんがよたよたと歩き出したのと同時にオレは立ち上がり、急いで窓辺まで移動した。

リビングを横切って行く聖くんの姿を視界の端に納めつつ、手早く布団をたたんでまとめると、よっこいせ、と持ち上げ、彼の後に続いて寝室へと入る。

まずは急いで敷き布団を畳の上に広げ、「聖くん良いよ」と声をかけた。

邪魔にならないように気を使っていたのか、洋服ダンスの前にちょこんと体育座りしていた聖くんは、立ち上がり、布団に近付くと、倒れ込むようにコロン、と横になる。


「お兄ちゃん…」

「ん?」


すかさず体の上に掛け布団を被せると、聖くんはうるうるとした瞳でオレを見上げて来た。


「もう一回、さんたくんよんで~?」


そして、ずっと胸に抱えていた絵本を、布団の隙間から両手でおずおずと差し出す。


「…うん、良いよ」


オレは枕元にあぐらをかいて座り、絵本を受け取ると、プレゼント仕様に結んだ紐をほどき、一瞬迷ったあと、それをパーカーのポッケに突っ込んだ。


「『三太くんは1日サンタ』」


表紙を開き、朗読を始めると、聖くんは満足そうに微笑みながら目を閉じる。


「今日はクリスマスイブ。三太くんはケーキとプレゼントを楽しみにしながら、お庭で飼い犬のポチと遊んでいました。『う~んう~ん』すると、どうしたことでしょう。垣根の向こうから、何だか苦しそうな声がします……」


開始してまもなく、聖くんは規則正しい寝息を立て始めた。


「よっぽど眠かったんだな…」


絵本を閉じながら呟く。

それでも、オレに促されたから、ここまで頑張って歩いて来たんだ。

じんわりと目玉が潤うのを感じつつ、オレは聖くんに囁いた。


「お休み。良い夢見てね…」


そしてそっと立ち上がり寝室を後にする。

次に目覚めるのはおそらく、イブの日になるだろうな。