「あ…」

「ね?簡単でしょ?」

「できたぁ~…」


聖くんはリモコンを両手で持って目の前にかざしながらそう呟くと、それをテーブルに置き、オレに視線を合わせた。


「お兄ちゃんありがとう~」


そして満面の笑みを浮かべながらの感謝の言葉。


「いえいえ、どういたしまして。あ、そうだ」


オレは再び荷造り紐を手にすると、テーブルの上の絵本を引き寄せ、まずは十字に巻き付けた。

そして表紙のど真ん中の位置に、先ほど同様リボン結びを作り、ハサミで切る。


「はい。絵本とおんなじ、プレゼントのできあがり~」

「わ~!」


聖くんはオレが差し出した、その装飾された本を両手で受け取り、嬉しそうに胸に抱えた。

そしてひとしきりはしゃいだあと、しみじみとした口調で言葉を紡ぐ。


「よかった~。これでぼくもみんなとおんなじだぁ」

「え?みんな?」

「うん。ほいくえんのおともだち」


オレは思わずドキリとした。


「お庭で遊んでる時、れなちゃんの髪のリボンがほどけちゃってね、『こうきくんむすんで』って言われたんだけど、ぼく、できなかったの」

「あ、でも、聖くんは男の子だから…」

「ううん。ゆうとくんもちはやくんも、ちゃんとむすべたよ~。お母さんにおそわったんだってー」


そこで聖くんは目線を下げ、ちょっと寂しそうに呟いた。


「ぼくのお母さん、いつもお兄ちゃんのそばにいたから、おしえてって言えなくて……」


瞬間、胸が激しくズキンッと痛む。


「でも、これでぼくもできるようになったもんね~!ここから出られるようになったら、みんなに見せてあげなくっちゃ!」

「そ、そうだね……」


オレは今、うまく笑えているだろうか。


「きっと、みんな、びっくりするよ……」

「うん!」


聖くんは輝くばかりの笑顔でそう返事をしたあと、しばらく絵本の表紙と裏表紙を熱心に眺めていたけれど、ふいに、大きなあくびをした。


「なんかぼく、眠たくなってきちゃった…」

「え。うそ、ホント?」


まだまだ外は明るいのに。


「うん。ごめんね~。あんまり起きていられなかった」


聖くんは瞼をこすりながら、心底申し訳なさそうに謝罪した。


「いや…お兄ちゃんが悪いんだよ。聖くんにいっぱいお手伝いさせちゃったから」