「まぁ、どうせ広告の類いだとは思うけど…」


言いながら、ソファーに腰を下ろす。

ケータイが普及した今、連絡手段にわざわざ信書を選択するって人はほとんどいないしね。

ポスティングされたのであろうチラシも数枚入っていて、その間に挟まれている郵便物をせっせと選り分ける。

昨日は郵便受けを見るのを忘れていたから、それでこんな風にごちゃ混ぜになってしまったんだろうな。

合計3通あった手紙を改めてテーブルに置き直し、上から順に見ていく事にした。

たとえ封筒のデザインで明らかにダイレクトメールだと分かったとしても、受け取ったからには一応一通り目を通してみないと気が済まない。

ハガキはもちろん、封書もきちんと中身を出して、『やっぱ重要な内容じゃなかったわ』というのを確認してから捨てるようにしている。

上の封書2通は予想通り、地元の家電量販店とデパートからの新春特売のお知らせだった。

それぞれポイントカードを持っていて、会員登録した際に専用用紙に住所も記入したので、定期的にセールのお知らせが届いているのだ。

ただ、その時は実家住まいだったので当然、書いたのは埼玉の住所なんだけどね。

きちんと届けを出すのが前提だけど、転居してから1年間は旧住所宛の郵便物は郵便局が自動的に新住所に転送してくれるので、これも無事にアパートに配達されたようだ。

引っ越した後、郵便局ももちろんだけど、市役所や銀行や保険会社、クレジットカード会社なんかにも速攻で住所変更の手続きに行ったり、連絡したりしたんだけど、ポイントカードまでは頭が回らなかった。

後で手続きしといた方が良いよな。

なんて事をぼんやりと考えながら、3通目を手に取り、それまでの流れに乗って機械的に封を開けようと糊付け部分を引っ張った所で『ん!?』となる。

遅ればせながら気付いたけれど、それだけ普通の茶封筒で、しかもリターンアドレスは手書きであった。

明らかにお店の広告ではなく『個人からのお手紙』という雰囲気。

しかし手が止まった原因はそれだけではない。

その差出人の名前に、全く心当たりがなかったのだ。


「吾妻貴子……?」


こんな知り合いオレにはいないぞ。

住所は都内で、ここからさほど離れてはいない地域に住む人のようだけれど……。


「あ!」


そこでようやくある事に思い当たる。