幸せになるために

脱いだパーカーをハンガーにかけて洋服ダンスの取っ手に吊るし、ルームウェアは畳んで布団の上に乗せた。

ジャケットを羽織り、リュックを手に寝室を出てリビングに足を踏み入れた所で、テーブル上に放置したままだったマグカップに気付き、とりあえずそれを流しに置きに行く。

ストーブに近付き電源をオフにしてから、聖くんの元へと歩を進め、先ほどと同様、ラグの上に腰を落とし、しばらく一緒にテレビを眺めていたけれど、画面の中の時刻が動いた所で宣言した。


「じゃ、お兄ちゃんそろそろ出かけるから。テレビはおしまいにしようね」


言いながら、リモコンの電源ボタンを押す。


「一人で寂しいだろうけど、頑張ってお留守番しててくれるかな?」

「うん。だいじょうぶだよ~」


聖くんはニッコリと笑顔を浮かべながら答えた。


オレも微笑み返し、「さて」と言いながら立ち上がり、玄関へ向かうべく歩き出すと、聖くんも後から付いて来る。

靴を履いてたたきに立ち、ラックから部屋の鍵を取った所で、見送りに来た聖くんに改めて視線を合わせ挨拶。


「じゃ、行って来ます」

「は~い。いってらっしゃ~い」


オレを心配させないよう、明るく手を振ってくれているのであろうその姿に、むしろ思い切り後ろ髪を引かれつつも、何とか頑張って外に出て、ドアを閉めた。

……ダメだなぁ。

あんな幼い聖くんが大人の対応をしてくれているというのに、オレがいちいち動揺しててどうすんだよ。

自分を叱咤しつつドアを施錠し、その場で数回深呼吸してから、『ヨシ、行くぞ!』と気合いを入れて歩き出した。

約5分ほどの距離にあるコンビニに到着し、入口を入って真っ直ぐそのまま突き当たりにあるお弁当コーナーに向かう。

この時間帯は普通の勤め人の方達はもうとっくに出社している頃で、なおかつお昼までまだ間があるので、店内はがら空きでとても買い物がしやすい。

その代わり、便がまだ到着していないようで、お弁当の品揃えがイマイチなんだけどね。

でも、いつもオレは陳列棚をざっと見て、その時に心惹かれた物をパッパッとチョイスしてレジに直行してしまうので、ラインナップが充実していてもいなくても、あまり関係ない。

むしろ、選択肢が少ない方が視線を配る時間が短縮されて都合が良いかも。