これはもう吾妻さんの、あの時の返しをパクらせてもらうしかない。


「前にここに住んでいた子は、クリスマスイブの日に生まれたから『聖』くんって名前なんだよって」

「ふ~ん。そうなんだ~」


聖くんはあっさりと納得した。


「…じゃあ、お兄ちゃんこれから火を使うから、ソファーの所に居てもらって良いかな?」


調理中近くにいたら危ないもんね。

いや、身体には何の影響も及ぼさないかもしれないけれど、オレがハラハラドキドキしちゃうし、念のため危険な物には近付かせないようにしておいた方が無難だろう。


「うん。分かった~」

「あ、そうだ」


トコトコと歩き出した聖くんの後に付いて、オレもソファーまで移動すると、テーブル上のリモコンを手に取り、テレビをつける。

この時間はちょうどチビッコが好みそうなプログラムが目白押しなんだよね。

オレも小さい時は散々お世話になったもんだ。

正直、内容をはっきり覚えているかと聞かれるとちょっと微妙なんだけど、居間のテーブルの、テレビが最も見やすい位置にスタンバイして、番組が始まるのをワクワクしながら待っていたあの頃の気持ちだけは記憶に残っている。


「あ~。ワンワン!」


案の定聖くんも、画面の中で陽気な歌を歌いながら、ダンスを披露している犬のキャラクターを指差して、興奮気味に声を上げた。


「お兄ちゃんが色々用事を済ませてる間、これ見ててね」

「うん♪」


ソファーによじ登り、そこから食い入るようにして画面を見始めた聖くんの姿に安堵し、オレはキッチンへと戻った。

自分一人だけなので簡単に済ませようと、冷凍のご飯を温め、おかずには納豆、味噌汁はお湯を注ぐだけの即席の物をチョイスして、それぞれ必要な調理を施した。

それらをダイニングテーブルに並べ、ストーブをダイニングとリビングの中間地点にセッティングしてから席に着き、「いただきます」と唱えたあと、黙々と食する。


「オレも一緒に見ようっと」


後片付けをして食後のコーヒーを淹れてから、カップを手にオレもリビングへと移動した。

着ぐるみショーは終わったようで、プログラムは次の物に移行している。


「面白い?聖くん」


ソファーではなくラグの上にあぐらをかいて座りながら、オレから見て右手に位置する彼に問い掛けた。