旦那様は冷徹社長!?~政略結婚は恋の始まり~

「はい。とても」

 そう言われて思わず彼を見る。

 美味しいなんて一度も言った事はなかった為、正直驚いた。

 もしかしたら両親の前だから、いい様に言っているだけかもしれないが、嬉しくて顔が綻ぶ。

「そうか。……所で仕事は順調か?」

 そう言うとお義父さんは日本酒をお猪口でグビッと飲む。

「はい。やっと軌道に乗った感じですが、なんとか頑張ってます」

「雅」

 突然、遠矢さんが彼の名前を呼んだ。

 誰もが遠矢さんに目を向けたが、彼だけは前を向いたまま手に持った湯飲みを見つめていた。