【短編】そんな、ある冬の帰り道。






そう言って、得意気に笑うこの男。



相変わらず、生意気。




「…忠犬のくせに」



「わんっ」



「うっさい」




ほんと、バカみたい。




「今日は、あたしが待ってるから」



「え、いいんすか?」



「しょうがないから、たまにはあたしが忠犬になってあげる」




そう言うと、池田があたしの頭を優しく撫でて、顔を近づけるから。



目を閉じると、耳元で囁いた。




「…おすわり」



「ふざけんな!」




【完】