あたしのぼんやりとした気持ちに名前をつけるとしたら、それは〝恋〟だ。 「…沙紀先輩?」 一瞬、時が止まったかのように感じた。 心臓の鳴り響く音が、ドクンドクンと次第に大きくなる。 「なんで泣いてんすか?大丈夫ですか?」 「…池田には関係ないよ」 カーディガンの袖で目をゴシゴシと拭いて急いで教室に戻ろうとすると、勢いよく腕を掴まれた。