ぼっちな彼女に溺愛中

「これに懲りたら、ちょっとは女の子に優しくすることだな。

そんで、こんくらいの状況でいちいち落ち込むなって。まだ、勝機はある。」

玲二は、ニッと笑ってメロンパンを平らげ、俺の手にあったカルピスをくっと飲んだ。

俺は、いまいち納得できない。

どうしたらいいのか、具体的な案だって浮かばない。

まず、今日図書室に行くかも悩んでいる。というか、7割くらいは行きたくない。

もう、このまま市谷との関係をなかったことに・・・。

およそ1か月だ。1か月前に戻るだけ。市谷と全然接点がなくて、ただからかう対象だったあの頃に。

思えば、あの頃の俺の方が俺らしい。

特にやりたいこともなくて、これといって習慣とかもなくて。ただ適当に、フラフラ遊んで、何にも縛られず。

でもあの頃は、本当になんもなかったんだよな。

今がなにかあるってわけでもないんだけど。

あの頃は本当になんもなくて、楽しいことも、特に腹が立つことも。まあ、時々言い寄ってくるしつこい女に悩まされてたくらいで。

今みたいに、こんな一人のことで一喜一憂するなんてこと全然なかった。

なのに・・・この一か月で、どうしたんだよ俺。

それもこれも、あの日、図書室にたまたま行って、市谷と話して、市谷の素顔を見て、市谷の笑顔を見て、初めてちゃんと俺を見てくれる女の子に出会って。

初めて、一緒にいたいと思う子に出会って、好かれたいって思った。

なんでこんな・・・。本気になんてなるもんじゃねーな。

扉を開ける瞬間は、感じたことのないドキドキがあって、ワクワクして、うれしくて、もっとあいつのこと知りたくて、知ってほしくて

開けてしまったら、ただ夢中になって、なんとか近づきたくて、調子に乗って都合のいいことばっか考えて

でも、こんな落とし穴もあるんだ。

市谷に彼氏がいるなんて、本当に1ミリも考えなかった自分がおろかすぎて笑える。

「やっぱり、俺には無理。どうしたらいいのかもわかんねえし。」

考えて、結論は無意識に口から出た。