「藍田く『アズ!!!』
俺を呼ぼうとした市谷の小さな声は、
和樹の声にさえぎられた。
相変わらず周りに女子をはべらせながら、ヘラヘラ手をふる和樹。
腹が立つ。
市谷の彼氏というポジションを手に入れながら
なに他の女子に愛想ふりまいてんだ。
俺は、全く関係ないのに、無性に腹がたつ。
でも俺は次に、もっと腹が立つことになった。
市谷が、呆れた顔をしながらも
手を振り替えしたんだ。
なんだよ・・・・
仲良くしやがって。
しかも俺の前で。
これが嫉妬ってやつか。
頭に血が上っている俺と
そんな俺自身を傍観者の立場で分析している俺。
二人の俺が、今存在していた。
たぶん、昨日電車の中で感じたあの気持ち悪い嫌悪感もそれ。
いやだな、この感情。
だれも悪くないのに、いろんな人に腹が立つ。
市谷にまでムカついてる俺自身にも。
そして、和樹のあら捜しをして、満足しようとしている。
気持ち悪い・・・・。


