「今日も一緒だったんだ?」
「昨日、あのまま家に。それで、今日も家から一緒に来たの。」
「い、家!?」
「うん・・・・?」
・・・ああ、まあ普通だよな。
付き合ってる男と女だし
昨日久しぶりに会ったみたいだし
そういう流れになるのは全然おかしなことじゃない。
「そうなんだ・・・。」
頭ではわかってるのに、
俺は上手く笑えなかった。
笑うなんてとてもじゃない。
がっかりした表情を悟られまいとするのに精一杯だった。
市谷は、他の男の腕の中を知っていたんだ。
この前俺が抱きしめたのがはじめてなんじゃないか?
なんて、そんなのは俺の勝手な妄想だった。
ちゃんと、男を知っていて
ぬくもりも知っていて
恋愛だって、俺よりきっと知っているんだ。
そして、市谷を知っている男もいる。
俺の知らない市谷を。
市谷が俺を知っていてくれたことがうれしくて
俺はどこか勘違いをしていたのかもしれない。
市谷が俺をわかってるだけで、
俺は市谷をわかってないし
市谷のこと、ちっとも知らない。
学校以外であったこともない。


