「めがね、返して。見えない。」
あ、忘れてた。
自分の左手ににぎられためがねをぼちたにに渡す。
なにも言わず受け取りそのままかけると、普段の"ぼちたにさん"にもどってしまった。
まあ、いいけど。
「ぼちたに、電車?」
頷いたのを確認してから、スマホで次の電車を見る。
「あ、でたとこだ。
次の電車、10分後。」
「このままのペースで歩いてたら、ちょうどいいね。」
ぼちたにの言葉に納得して
とくにペースを速めることもしない。
「あ、星!」
うれしそうに、空を見上げる視線の先には確かに星。
それが?とか思うけど、本当にうれしそうなため言わない。
「町の明かりがなかったら、もっといっぱい見えるのかな?」
「さあ。
てか、こんな遅くまで大丈夫なの?」
それこそ、星が見えるような時間まで外出してて平気なのか?
だってぼちたに、今までこういうのなかっただろうし。
両親とか、心配してるんじゃ・・・
「大丈夫。お兄ちゃんはもっと遅いもん。」
へえ、お兄さんいるのか。
「なら、いいけど。」
それからも、他愛ない会話を重ねながら
二人で駅まで歩いた。


