昼の電車は、すいている。

和樹との間に少しの距離をとっても、十分迷惑にはならないくらいには。

「俺、今から愛樹に告ります。」

少しあいて隣に座る和樹に言う。

「そうか。」

「止めないんですか。」

「止めてほしいのかよ。」

「ちがいますけど、殴られはするかなって。」

「こんなとこで俺が問題起こせねえだろ。俺、一応アイドル。」

伊達眼鏡の奥で俺をにらむ。

アイドルじゃなかったら、確実にやっていたってことか?

「そうっすね。」

「でも、俺は認めない。」

「でしょうね。ならなんで、案外あっさり俺を愛樹のもとへ?」

屋上で頭をさげたとき、半々くらいの気持ちだった。

いや、どっちかというと和樹は協力してくれない方に分があった。

でも、こうして今、和樹とともに俺は愛樹のもとへ向かっている。