和樹はしばらく何も言わなかった。

俺も頭をあげることなく、待っていた。

返事は1種類のみ。

YESでしか頭をあげない。

それは和樹にも伝わっていると思う。

「・・・来い。」

視界の隅で、和樹の靴が向きを変えた。

頭を上げると、校舎の入口へ向かっている。

ついてこい、ということだ。

たぶん、和樹の、愛樹の家へ連れて行ってくれる。

愛樹に、会わせてくれる・・・。

「玲二。」

「お、おう。」

「俺いってくるわー。」

「・・・わかった。」

玲二はただそれだけだった。激励の言葉とかはなかった。

でも、今の俺には必要ない。それが玲二にもわかってたんだと思う。


・・・愛樹。

今、行くから。

俺の話を、聞いて。