「中3のとき、章吾とそういう関係になれて、うれしかった。

他の子よりも、体だけでも章吾に近づけた気がして。

でも、それと同時にすごくつらかった。体を重ねるごとに思うんだもん。章吾は私になんの感情もないって。嫌でも気づかされる。

けど諦められなくて、卒業後に告白しようと思って連絡したけど、返ってこなかった。そのとき、やっぱりだめだったって、章吾は私のこと何とも思ってなかったんだって確信した。」

今にも涙がこぼれそうなのに、こらえてるのか、瞬きもせずに話し続ける。

話を聞きながら、今までの俺がいかに最低だったのかを改めて知った。

菜月の気持ち、全然知らなかったし、気づかなかった。

卒業後に連絡がきたときも、気にも留めず、ただめんどくさくて放ったらかしにしていた。

ほんとに。どんだけ最低なんだ、俺・・・。

「高校に入っても、章吾のことが忘れられなくて。

忘れたくて他に彼氏を作っても、その彼と体を重ねるとき、章吾が目の前にでてくる・・・。

好きな人に抱かれたいって、本能が思ってるのかな。

いつのまにか、目の前の彼が章吾になってて、それが無意識にだから、消すこともできない。だから余計に忘れられない。」

菜月の目からは、とうとう涙がこぼれた。

それを見ても、どうすることもできない。

その涙をぬぐうことは簡単だけど、俺が拭ったら、余計に菜月を傷つける。