「ぼちたに、自分の素顔とかどう思ってる?」
もう、一回敬称なしで呼んじゃったし、これからも呼び捨てでいっか。
「わたし、小学生のときから目が悪くて、
まともに素顔を見たのはずっと前だから、あんまり覚えてない。」
「え!?ってことは、自分の顔、知らないわけ?」
「めがねしてる顔は知ってる。」
「してない顔は?」
「わからない。裸眼で鏡をみても、ぼやけてるから。」
マジか・・・・。
「でも、わたし、だめなんでしょ?」
「え。あ・・・」
曖昧な返答。
「そんな気はしてたの。
だから、藍田くんに見てもらってよかった。ありがとう。」
そこまでいいことをしていないのに、言われるお礼って、
けっこう心が痛む。
「もう、絶対はずさいない!」
この言葉に、俺はぼちたにには悪いけどうれしくなった。
ぼちたにの素顔、誰にも見せたくない。
俺だけが知っていたい。
なんでかはわからないけど、そう思ったから。