先に荷物をまとめ終わった藍田くんは、ひらひらと手をふって図書室をでていった。

彼の背中を見ながらも、まだあの表情がよぎる。

私によく向けられるあの表情。

目を細めて、唇は軽く弧を描いて、優しく少しだけ首をかしげるようなしぐさをする。

あれを向けられたら、しばらく頭から離れなくなる。

なんだか、平気でいられない。

胸の奥の方がざわざわする。

感じたことのない、焦燥感にも似たような・・・

上手く説明できないけど、静かではいられない。

今もそう。

彼はもう去っていってしまったのに、頭から離れなくて困る。

これはなに?