「愛樹?」

名前を呼ばれて彼を見る。

テストが終わったというのに、彼は相変わらず図書室へ来て

もう特等席と言ってもいいほど恒例の、私の向いに座っている。

「ボーっとしてただろ?」

含み笑いで、私を見るまっすぐな瞳。

「なんか考え事でもしてたの?」

「あ、えっと・・・ううん。なんでもない。」

彼は、私の答えを聞いて軽く鼻を鳴らすとまたノートに視線を落とした。

そんな彼を見て不思議に思う。

あのころ、一人でいた私からは考えられないこの状況。

影から見ていたクラスの人気者の彼が、今の目の前に座って勉強してる。

どうしてなのかな。

図書室で彼と会ったあの日から、私の生活は一変した。