始まるものを始まらない、か。

確かに、今のままこの関係をずるずる続けていてもきっと愛樹は俺の気持ちに気付かない。

それこそ仲がいい、よく一緒にいる男ってだけだろう。

俺は愛樹と仲良くなる、を目標としているわけじゃない。

その先に行きたい。

むしろ仲良くなることは、スタートラインまでに済ませておくことだろう。

わかってはいるけど・・・

へたれな俺がまたここで登場してくる。

もし、告白して・・・フられたら?避けられたら?

また愛樹と一緒にいられなくなったら・・・。

そう考えると、躊躇する。

スタートラインで走り出せずにいる。

「おい、章吾。」

「わかってるよ。」

急かす玲二にそんな言葉しか返せない。

「わかってるけど・・・。」