「ごめんね、矢崎さん。なにもできなくて、ごめんなさい。」

愛樹は目に涙を溜めたまま矢崎さんを抱きしめた。

「・・・やめてよ!」

理奈は愛樹を突き飛ばす。

「愛樹!」

俺は慌てて愛樹を受け止めたけど、理奈の気持ちが少しわかる気がする。

「余計に惨めだから。」

震えながらも、気丈にふるまっていた理奈だけど、とうとう目から涙がこぼれた。

「私、ずっと章吾が好きだった。」

泣いている目のままで俺を見て理奈は告白した。

「うん。」

気づいてたから、ただ頷く。

「でも、ぼちたにさんに反論されて、自分が自分のことしか考えてないのかもって思った。

章吾が好きなんじゃなくて、章吾っていう完璧な男をそばに置きたいだけなのかもって。
でも、みんなそうなんじゃないのってその次には考えて、やっぱりそれでいいじゃんって。

そういう好きもあるでしょ?
だから、章吾の誘いもうれしかったし、本気にした。で、ああいう目にあった。」

一呼吸おいてから、「自業自得だよね。」とつぶやく。


「すっごい恥ずかしかったし、めちゃくちゃ傷ついた。」

理奈の言葉が胸にささる。

俺は、一人の人をここまで傷つけたんだ・・・。

「けど、時間がたつにつれて、罰だったんだって思えてきて・・・

私は私が可愛くて、勝手に私より劣ってるって思い込んでたぼちたにさんが、私が狙っているものを手に入れようとしてるのにムカついて、

あたって、理不尽に傷つけて・・・それで罰が当たったんだ。」

理奈の目からは涙が止まらない。

「私こそ、あのときはごめんなさい。」

愛樹の目を見て、言う。