「あの、私は・・・。」
俺と理奈は黙っていたけど、愛樹が声を発した。
「私なんか、お呼びでないと思うけど・・・
私は心配でした。矢崎さんのこと。」
愛樹があまりにも真剣に言うから、理奈も愛樹に目を向ける。
「だって、私はあの日の矢崎さんを知ってるから。」
そうだったな。俺たちが理奈を辱めたあの日、愛樹は俺を引っぱたいて、理奈を連れて行った。
その後の授業、体調不良で遅れてきたことを思い出した。
「あの日、矢崎さんは泣いてたのに・・・何もできなくて。
私には友達がいないから、泣いている女の子にかける言葉がわからなかった。」
愛樹は、そのときの感情を思い出したのか少し目を潤ませる。
俺はまた罪の意識を感じる。
「その後、矢崎さんが学校に来なくなって、心配だけど連絡先もわからないし、他の女の子に聞いてみても、誰も教えてくれないし。
でも、藍田くんに聞くのもなんか違うかなって。
藍田くんが、あの日のこと悔いてた知ってたし、それを責めるみたいになっちゃうったらって思うと、聞けなくて。」
愛樹・・・。


