そして放課後。

いつものように、図書室に行くと市谷はすでにノートを開いていた。

その様子を戸口のあたりでそっと盗み見る。

まえまでは、なんとも思わなかったのに、今では普段通りの眼鏡をかけて、もさい姿の市谷でも可愛く見える俺は、やっぱりおかしいと思う。

傾きかけた太陽の光が、窓から淡く差し込んで、市谷の髪をキラキラと照らす。

勉強しながら、さらっと落ちる髪を耳にかけたりする姿だけでもドキッとする。

なんでこんなに・・・・

自分でもわからない。

でも、気づいたらこうなってて、もう止められないのはわかる。

ギシッ

古い床板だから、俺の体重で音がなった。

その音で市谷が顔をあげて視線が絡む。

「藍田くん・・・。」

大好きな市谷の声で呼ばれる俺の名前。

俺を呼ぶ奴で"藍田くん"って言うのは、市谷くらいか。

他はだいたい名前呼びだしな。

そういう俺だって、よくしゃべる奴は、女子でもだいたい名前で呼んでいる。

でも、市谷は・・・・