なかなか次の一言が出てこない。

一緒に電車に乗りたい気持ちもあるし、まだ一緒にいたいのは確かだけど。

なんか恥ずかしい。マジで照れる。

「ぼーちたにさん!」

ずっと黙っていた玲二が口を開いた。

「あ、はい?」

「最寄りから家までは距離あるの?」

「ううん。そんなにないです。」

「なら、ここまででも平気?」

え?玲二何言ってるんだ。

「あ、はい!送ってくれてありがとう。」

「あ、市谷っ『いえいえ~気をつけてね~』

俺の呼び止める声に、首をかしげる市谷だけど、玲二に促されて、気にしながらっも改札をくぐる。

「じゃあ、また明日。」

改札の向こうで一度だけ振り返り手を振る。

今朝は和樹に向けられていたそれは、今は俺に向けられたもの。

それが異様にうれしくて、にやける顔もそのままで俺も手を振り返した。

そして、市谷が見えなくなるまで背中を見送った。