ぼっちな彼女に溺愛中

「なに?」

和樹は、息を切らす俺を不審そうに見る。

隣の女も不思議そうに黙って俺を見上げる。

どっちにも腹立つけど、和樹はマジで許せない。

「なに?じゃないだろ。どういうことだよ、これ。」

そう言って女を指さす。

「え?私?」

女は予想外と言ったように目を丸くする。

・・・この女も被害者か。二股かけられてることを知らないのか。かわいそうに。

「は?なにが?」

和樹はどこまでもシラを切るつもりらしい。

なら、仕方ない。ちょっとでも悪いと思ってるような節があるなら、二人で話せるところに移動しようと思ったりもしたけど、もういい。そんな配慮してやらない。

「とぼけるなよ。おまえ・・・『あ、よかった!まだいた!!』

二股してるんだろ?と言いかけて、よく知る声に遮られた。

今、一番聞きたくなかった、俺が好きな声。

なんでこんな状況でくるんだ・・・。

「あれ?藍田くん?」

その声の主は、いつものように俺を呼ぶ。

俺は、おまえに呼ばれるのがすごく好きだ。

ただ普通にクラスメイトを呼ぶだけなんだろうけど。でも、うれしいんだよ。

けれど・・・今は呼ばれたくなかった。

来てほしくなかった。



・・・こんなところ、見せたくなかった。

市谷に気付かれる前に、なんとかしたかった。