ぼっちな彼女に溺愛中

でも、俺の願いも虚しく二人は歩きながら

戯れに唇を合わせた。

「・・・・っ」

俺の中の何かがキレた音がした。

・・・・ふざけんな。

ふざけんなよ!!!

俺は無意識に二人に、いや和樹に向かって走っていた。

「おい!!!」

遠くから呼び止める。

周辺の奴らが全員一瞬だけ俺を振り返って、自分のことじゃないとわかるとまた歩き出す。

和樹たちもそうだった。でも、俺は確実に和樹をにらんで、和樹に向かっていたから歩き出すことはなかった。

向かってくる俺を見て一瞬、変装の伊達眼鏡の奥の切れ長な目が見開かれる。

「あ、おまえ・・・。」

見覚えのある俺の顔に、和樹は自分に用があると確信して体ごと振り返った。

特に悪びれた様子もなかった。それにまた腹が立つ。

市谷との関係を知っている奴に、今の状況を見られてもこいつは全く後ろめたくないってことか?

それだけこいつにとっては、遊びだったってことか?

じゃあ、市谷はどうなるんだよ。

今朝の女子に囲まれた和樹を困ったように見て笑いながら手を振り替えしていた市谷が浮かぶ。

彼氏があんな状況でも何も言わないできた彼女だ。

こいつは、そんな市谷の優しさの上にあぐらを掻いて好き放題。

許せない。最低だ。絶対に許せない。たとえ市谷が許したとしても、俺は許せない。

頭に血が上ったまま、俺は和樹の前で足をとめた。