僕は慌てて俊ちゃんの肩をつかんだ


しかし、一向に止まる様子もなく、逆に僕が腕をつかまれ引っ張られてしまった


腕に俊ちゃんの手が食い込んで、痛い




「俊ちゃん!痛いよ!!」

僕の文句を無視して、ズンズンどことも知れぬ場所に引かれる



そのうちに、草むらに入り込んだみたいだ


ガサガサと草の音が響き、木のような影が見える




幾度か俊ちゃんに呼びかけたが、全て無視



手を振りほどこうにも、力がかなわない




どうしよう……



いよいよ怖くなって、もう一度俊ちゃん、と呼ぼうとしたその時、



「着いたぞ」


俊ちゃんがようやく口を開いた


木々の影が消え、視界が開ける




ずいぶん、広いところみたいだ




ただ、あちこちに何かがある


十字架のような影や、大きな石みたいなものが見える


石は立てられているし、十字架なんていくつもある





これじゃまるで




墓じゃないか






「俊ちゃん、ここ…」



「ああ、見えるか?
ほら」



俊ちゃんが、手にしていた懐中電灯の光を近くにあった十字架らしき影にあてた




案の定、それは十字架の墓だ



木…でできているのかな?


二本の木を紐で縛っただけの簡易的な墓




しかもこの場所、墓らしきものが一面にある



「ここはな、この町がまだ村だった頃の…かなり昔の墓なんだよ」



「へ、へぇー…」



「ここを知ってるのはこの町の人でもそんなにいない

数えるほどしかいないだろうな」



「そうなんだ……」



わからないな


なんで俊ちゃんはここに僕を連れて来たのかな?




「あのさ、カナタ」



「?」




「お前が知りたがっていた、昔ばあさんから聞いたっていう昔話、

教えてやろうか?」