もう日はすっかり暮れた

涼しいと言えど暑く照りつける太陽の代わりに月が僕らを照らす



「いいか?
二人一組で、ここから神社まで歩いていくんだ
そんで、それぞれ配られた賽銭を賽銭箱に入れ、お参りして戻ってくるんだ」

俊ちゃんが、子どもたちの顔を見回し、確かめるように言った


ここ、公民館の裏にある小道を真っすぐ進むと神社があるらしい


歩いて十数分で、街灯は全然ないけど月光はある
小石がゴロゴロ転がっているが、転んでしまうほど大きなものもないので心配ない

5分ごとに二人一組のペアが出発し、神社からの帰り道は来た道とは違い神社から大きく回り道をして帰ってくるそうだ



うん、きもだめしとはいっても、この程度なら全然こわくないや

俊ちゃんの言ったとおり、きもだめしは小学生でも余裕でこなせるものだ


こんなことなら、最初から怖がらずに来ればよかったな



ちなみにペアはすでに割り振られていて、年齢などでバランスよく分けられている



僕と詩織ちゃんは初めてなので、僕は俊ちゃんと

詩織ちゃんは日下部さんの娘さんの日下部千夏ちゃんとペアになった




子どもたちはさして怖がる様子なく、キャーキャーと騒いでる


出発する順番はクジで決められ、僕と俊ちゃんは5番目、詩織ちゃんと葵ちゃんは9番目だ



「あたし、日下部千夏です…
よ、よろしく…」


日下部さんの娘・千夏ちゃんはおとなしい、かなり内気そうな子だった


ショートカットの、赤いフレームの眼鏡がよく似合う知的な女の子

「僕は長谷川カナタ」

「私は中山詩織!
千夏ちゃん、よろしくね!」

詩織ちゃんは千夏ちゃんの手をとって、ブンブンと振った


千夏ちゃんは戸惑いながらも、詩織ちゃんに合わせる




詩織ちゃん、うれしそうだなぁ…


そうこうしているうちに、ついに一番目のペアが出発した


「おい、カナタ
順番なんてすぐ回ってくるからな
ほれ、虫除け」

俊ちゃんがブシューーッと虫除けスプレーを僕に吹きかけた


「ぐはっ!
ちょ、そんな急に…っ」

「詩織もやっとけ」

ぽいっと詩織ちゃんにスプレー缶を投げる


にしても、俊ちゃん虫さされとか気にするのか


ちょっと意外だな…