「やー、お前でかくなったなー!
昔はほんっとチビだったのに!」

「俊ちゃんこそ!
たくましーなー、何?野球部?」

将来サッカー選手になる!とか言ってた気がするんだけどなぁ…

「いや?サッカー部だけど…?」

「「ウソぉ!?」」

僕と詩織ちゃんの声がハモった

いやいやいや、どーみても野球部だろ!?

「何だよ?!
てか、この女誰?彼女?」

「かっ…
幼なじみの中山詩織ちゃん!」

「ふーん、カナタが彼女ねぇ…」

俊ちゃんがニヤニヤ笑う

ばあちゃんといい俊ちゃんといい、何なんだよ!!


僕と詩織ちゃんがつりあうわけないだろ!?


「中山詩織です、よろしくね」

「おう、よろしくな、詩織。
で、お前ら帰んなくていいの?
長谷川さん、心配してんじゃね?」

詩織?!

いきなり呼び捨て!?

しかし、詩織ちゃんは一切気にする様子もなく、

「いや、だから迷ってるの!」

と俊ちゃんに言い返す


長い付き合いの僕ですら呼んだことないのになぁ…

「あ、そういや言ってたな
長谷川さん家まで遠いぞ?」

「いや、電話さえ貸してくれれば、ばあちゃんに迎えに来てもらうよ」

「電話か
俺ん家、少し歩くけど近くにあるから電話貸してやるよ」

「ほんと!?ありがとう、俊太君!」

詩織ちゃんが嬉しそうにお礼を言う

助かった

もうどうしようかと思ってたよ…

「んじゃ、行くか」

と、俊ちゃんが、さっき現れて来た雑木林に入って行く


草が生い茂っているが、何度も通っているのだろう

大分草が倒れていて、歩きやすい


ズンズン前を進む俊ちゃんが、ふと思い出したように尋ねてくる


「そういや、あの石灯籠、なんで灯りがついてたんだ?」

「え?」

「あの石灯籠に灯りがついてるの、初めて見たぜ
あの神社自体、人が寄り付かないのに」

「いや、僕らはあの灯りを見て神社に着いたんだけど…
あの神社、何なのさ?
なんか人形がたくさんあったけど」

「さぁ?昔からあーだよ
んー、でも………
何かを祀ってるらしいけど…
気持ち悪いよな、なんか」

「へ、へぇー…」

地元の俊ちゃんも知らないのか

気持ち悪い、ほんとにあの神社は気持ち悪かった

「俊太君はよくあの神社行くの?」

「あ?行くわけないだろ、あんな気味悪いところ
灯りが見えたから、気になってたまたま行っただけだ
地元の人間だって行かねぇよ」

まぁ、そうだよな

僕だって、二度と行きたくない


雑木林を抜け、狭い道路に出る

民家がチラホラあり、夕飯らしき匂いも漂ってきた


「回覧板、届けに行った帰りだったんだよ
ホラ、その家。
確か、来る時は石灯籠の灯りなんか見えなかったんだ
届けて、帰ろうとした時に灯りに気づいてさ
こっからでも、石灯籠ってよく見えるじゃん
人なんかいたらすぐ気づくんだけどな」

え…

ちょっと待てよ


「しゅ、俊太君…
その、さ
そのお家に回覧板を届けて、灯りに気づくまでの時間はどのくらいだったの?」

俊ちゃんが回覧板を届けたといった家はすぐ目の前

しかし、留守なのか車も電気もついていない


玄関の前に、回覧板らしきものがある

多分、俊ちゃんが置いたんだろう

「留守っぽかったから、ぱっぱと置いたぜ?
時間なんて、数秒だろ」


僕と詩織ちゃんは顔を見合わせる

いやいや、ちょっと待ってくれ

「ねぇ、カナタ君…
石灯籠、確かにこっからよく見えるよね」

後ろを振り返る

雑木林といえど、細い木ばかりなので、それなりに離れた神社も、石灯籠もよく見える


確かに、石灯籠に灯りをつけようとする人がいたらすぐわかる


「ん?」

あれ?


石灯籠の…


「灯りが…」

僕のつぶやきに、詩織ちゃんと俊ちゃんが振り返る


「あっ!」

「石灯籠の灯りが、消えてんな…」