どうしよう
思いっきりここ森じゃん
多少整備されている道だけど、道がよく分かれる
さっきから適当に進んでいるが、もうどこに向かってるのか全然わからない
「ゴメンね……カナタ君、私のせいで……」
詩織ちゃんがショボンとする
「詩織ちゃんのせいじゃないよ!ちゃんと道を見てなかった僕が悪い」
詩織ちゃんは断じて悪くない!!!
「それに、もしかしたら民家がどっかにあるかも…」
ふと、視線を横にずらすと
「!!」
「どうしたの?カナタ君」
灯りだ
ボンヤリと向こうの方に灯りが見える
夕日でまだ明るいとはいえ、さすがにばあちゃんを心配させてしまうし、夜になってしまったら詩織ちゃんが可哀想だ
助かった!!
「詩織ちゃん!
あれ見て!」
「…あ!」
僕らは顔を見合わせ
走り出した
やった!
これで帰れるかもしれない!
じゃりじゃりと砂利を踏み散らし、灯りの方へと走っていく
しかし
道が途切れ、目の前は崖になった
木でできた、古い吊り橋がある
その向こう側に、灯りが見える
さすがにこの吊り橋を走っていくのは勇気がいるので、詩織ちゃんとうなづき合い、僕が先に渡る
後ろから、詩織ちゃんがついてくる
ギシギシ……
吊り橋がきしむ嫌な音がする…
こ、怖い
高い高い!
心臓がバクバクいう
吊り橋の下は、僕らがさっき行った白登川だ
けど、かなり下
この吊り橋、相当高い!!!!
詩織ちゃんの様子を確かめたかったが、何よりも、はやくこの吊り橋を渡ってしまいたい
何でこんなに長いんだよ!?
吊り橋は、かなり長い
綱をつたって慎重に渡る
ギシギシ
ギシギシ
ギシギシ
…………………………
「つ、着いたー!!!」
ようやく、ようやく着いた!!
怖かったーーーーー!
詩織ちゃんも、続いて渡り終わる
「こ、こ、怖かったね………」
詩織ちゃんもホッとした表情を浮かべている
「灯りは…」
詩織ちゃんが灯りの方を向く
吊り橋を渡る前の道とはちがい、途端に石畳みの道が広がっている
その先には……
「「神社?」」
神社だ
かなり古びた神社。
所々塗装が剥げて、小汚い印象の小さな神社
灯りは、石灯籠だった
石畳みの道を挟むように、二つの汚れた石灯籠に灯りが灯っている
そして、奇妙なことに…
人形
人形が、沢山飾られている
手水舎や、賽銭箱、本殿の至る所に、人形がある
折り紙や陶器など、素材は様々だが、どれも髪の長い、赤い着物を着た女の子を形どっている
うわ…
「言っちゃ悪いけど、不気味だね…」
「う、うん。正直、さっきの吊り橋の後にこれはかなりキツイ、かな」
詩織ちゃんが僕の服の袖をつかむ
ギュッ
!
やばい
可愛いいいいい…ッ
神社の不気味さよりも、詩織ちゃんが僕の服の袖をつかんでいることの方が気になってしまう
まぁ、詩織ちゃんが怖がるのも無理はない
僕も、かなり怖い
飾られている人形の量が、半端ないんだ
何体くらいあるんだろう?
百体以上はあるよ
しかも、新しいものなどなく、どれもかなり古びている
特に、陶器の人形は顔にヒビが入っていて、髪もボサボサで、もはやホラーにしか見えない
「人、いるのかな…?」
こんなとこに、いるのかな?
「でも、石灯籠に灯りが灯っているんだから…」

