小麦色の肌を見せながら、楽しそうにヨットを操るあっちゃんをもう一度だけ見て見たい。



「海の神様。
優しい優しい、海の神様。
どうか、どうか、あっちゃんをお守りください。」


どこかにいる、海の神様に手を合わせると、私はまた勢いよくペダルをこぎ出した。



辺りには自転車を漕ぐ音と波の音が広がるばかり。

遠くにはこっちゃんたちの笑い声が聞こえてくる。




カモメの鳴き声
海のさざ鳴り。




それらに合わせてカバンの中で小さく携帯が鳴る。



出ようかな⋯⋯
そう思ってカバンに手を伸ばしたけれど、やめておいた。




この空気がキモチイイから。
この海の音をもっともっと聞いていたいから、電話に出るのはやーめたっ。


なんか事件があったらまた電話かけてくるでしょう。また、病院に着いてケイタイを見れば済むことだ。




海の音を聴きながら、私はまた自転車を走らせた。

キラキラ光る、海を見ながら自転車を走らせた。




【夕凪に映える月・Fin】