私はとても悩んでいた。
おばさんもおじさんも、誰も私のコトを攻めなかった。だけどやっぱり気にしてたんだ。


こうなったのは自分のせいなんじゃないか、って⋯⋯。




そんなことをお昼休みに学食でこっちゃんに相談すると


「うーん⋯⋯でも、それって“たられば論”じゃね??」


お昼のカツ丼を食べながら、こっちゃんはあくまで冷静にそんな言葉を呟いた。



「ああしとけば、こうしとけば⋯⋯ってあるけどさ?アツ先輩がこんなことになるなんて誰も想像できなかったワケじゃん。」


「まぁ、そうだけど⋯⋯。」


「じゃぁ、しょうがないじゃん。
そんなこと言ってたら風香さんだって“もっとアツ先輩を引き留めておけば”とか逆に“もっと早く別れ話から解放しておけば”といろいろ出てくるだろ??後悔したってしょうがないって。起きてしまったコトは起きる前には戻せないんだし、後悔したって懺悔したって時間が戻るわけでもないんだからさ?」


こっちゃんは言いにくそうに。でも私の瞳を見据えると


「誰も言ってくれないんなら俺が言ってやるよ。凪紗は何にも悪くない。」


「こっちゃん⋯⋯。」


「今回のことは事故だ。どんなに気を付けてたって事故は起こるもんなんだよ。誰が悪いワケでもねぇよ。」


そう言ってカツ丼を勢いよく口の中に放り込んだ。



ザワザワとウルサイ学食。
みんなが思い思いの話をして楽しんでいる、この空間。


こっちゃんは優しくなくて、厳しくて、耳に痛いコトばっかり言うけど⋯⋯やっぱり優しい。こんな風に私を励ましてくれる人は、こっちゃんしかいないと思う。


「ありがと、こっちゃん⋯⋯。」


目頭に熱いものがあふれてくるのを感じながら、それだけを呟くと、こっちゃんは黙々とカツ丼を口に運びながら


「オマエが今やるべきなのは後悔じゃなくて、今何ができるか考えることだろ??」

「⋯⋯うん。」

「頑張れ。俺は⋯⋯ちゃんと見ててやるから。」


ぶっきらぼうに。でも誰よりも優しく、誰よりも厳しいエールを送ってくれた。