夕焼けを受けて真っ赤に染まる海。夕凪の時間になった海はまるで鏡のように空の景色をそのまま映す。


夕焼けに光る海


徐々に訪れる夜の色も映しながら、海は少しずつその姿を変えていく。




そんな海をどのくらいの時間見ていただろう。




しばらくするとあっちゃんは


「この風景が好きだから地元から動きたくないのかもな。ま、どっちにしてもカッコイイ理由じゃねぇよ。」


そう呟くと私の頭をクシャクシャと撫でて


「さ、帰るぞナギ!
しゃかしゃか体動かせー!」

「や、やめてよ、あっちゃん!」

「あはは!!」


困る私を見て笑ったのだった。



あっちゃんは夕焼けに染まる海が好きで。

特に夕凪の海。夕焼けの時間の海を見るのが何より一番好きだ、と言った。


夕焼けに染まって真っ赤になる、海と私たち。


しばらくボーッと夕焼けに染まる海を眺めた後、ヨットの道具を片付けて、部室にも鍵をかけて、私たちは家路につく。


あっちゃんと帰る帰り道。
海岸沿いに続く長い長い坂道を夕暮れの中、自転車を押しながら歩いていると、あっちゃんは必ず後ろを振り返る。


そして夕闇に染まりゆく海を見ながら、彼はやっぱりこう呟くのだ。



「俺、あと何回この風景を見られるんだろう。」


「…え??」


「変だよなぁ。
変なんだけど俺…やっぱり長く生きられない気がする。」