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「じゃ、行ってくるから。」

「うん。頑張ってね、お兄ちゃん。」



あっちゃんと気持ちを確認しあった一週間後。お兄ちゃんが受験に旅立った。


東京の私大を受けることにしたお兄ちゃん。風香さんも同じ大学を受けるということで、2人は新幹線のチケットやホテルを示し合わせて、取ったらしい。



そんなお兄ちゃんを見て、頑張れ!と思う一方で、これが終わったら……と考えてしまう自分がいた。


あぁ、何やってんだろ、私。
風香さんもお兄ちゃんも一生懸命勉強して、今日の日に挑んでいるのに、私は何てこと考えてるんだろう。


あっちゃんと気持ちを確認しあった、あの日から。私はどんどん意地悪な女になっている気がする。


見てるだけで満足だったのに、手に入るとわかった瞬間に欲が出る。


こんな日でさえ、彼のことを思ってしまう自分に心底驚く。


私はそんな自分に毎日、自己嫌悪に陥っていた。



そしてこっちゃんが昔言っていた“不健康な恋愛”という言葉を思い出す。


きっとこれは不健康な恋愛なんだろう。風香さんを裏切って、内緒であんな約束なんてして。


彼が手に入るかどうか、なんて正直よくわからないし、あっちゃんがどこまで本気なのかも疑わしい。


あっちゃんにも、風香さんにも黒い感情が渦巻き始める。そしてそんな自分に吐き気がする。



不健康な恋愛なんてしても、何もいいことなんてない。



こっちゃんの言葉の通りだと心底思った。