夕凪に映える月



「そうは言ってもなかなかチャンスもないしさ??ここまで“妹”ってタンカを切っといて今更“好きです”って言うのもなかなか難しいんだよ!!?」


そうだよ!!
私にだって、私なりの都合ってモンがあるんだから!!


フンフン鼻息荒くしながら、中華丼をつつく悪魔に進言すると


「あっそ。じゃぁ、俺には金輪際相談してくんなよ。」

「え、えぇ!!?」

「俺、人の恋愛相談に乗ってさ??あれこれ忠告してやってんのにその忠告無視されんの腹立つし??そんなどうでもいいことで腹立てるのもキレんのもヤだし??こういう卑怯モンの手伝いだけは絶対にしたくねぇし?ぶっちゃけオマエの恋愛なんてどうだっていいと思ってっから、そこんとこヨロシク。」


虎徹という名の悪魔は顔色1つ変えずに、こんな恐ろしい一言を放ち始める。



ヨロシクじゃなくて“夜露死苦”と変換したほうが正しいんじゃないの、コレ……!!



なかば脅迫にも似た最終通告を非難がましい目で見つめる、私。そんな私の視線なんて気にも止めずに、こっちゃんは黙々と中華丼を口に運ぶ。


――くそう!!


ゴメン、の言葉も
わかった、という一言も
どの言葉も言うのがためらわれて、私も負けじと黙々とお弁当をつついていると、どこかから視線を感じて思わず後ろを振り返る。


あれ…??
気のせい…??
でもすごい視線を感じたんだけど……。