「俺、長く生きられない気がする。」


これが彼の口癖だった。


空が太陽を映して真っ赤に染まり、空も空気も何もかも彼自身をも真っ赤に染め上げる夕焼けの中で、彼は笑いながら呟いた。



「あのねえ。
そんな縁起でもないこと言わないの。」


「えー、だってそんな気がするんだもん。」


「やめてよ。
あっちゃんがいなくなったら……私が困る。」



彼は二つ年上の17歳。
お兄ちゃんの小学校時代からの親友で、私の第二のお兄ちゃんみたいな存在。


180センチ近くある高い背にスラリと伸びた長い手足。ヨット部に所属していて、健康的に焼けた体に引き締まった肉体。


そんな彼は、真夏の海がよく似合う。



彼の名前は西野篤弘。
私の初恋の人。



あっちゃんの顔は正直普通だと思う。かっこよくもなければ、かっこ悪いワケでもない。


でも彼には彼にしか纏えない、独特の雰囲気みたいなものがあって、彼に夢中になる女の子は少なくなかったように思う。