2013年10月



次の授業は音楽か。

移動教室だるいなぁ~。

そう思いながら俺は春斗と音楽室に向かっていた。



「あっ、圭。あそこに愛しのお姫様がいるぞ」



春斗にそう言われて俺は春斗の指差す方を見た。

そこには案の定、澪ちゃんが一人で歩いていた。



「澪ちゃ…」



「澪っ!!」



俺が声をかけようと思ったら横から他の声がした。



「あっ!玲次」



「おい、ヒマならこの荷物生徒会室に持ってくの手伝え!」



須藤が大量の荷物を持って澪ちゃんに近づいた。



「え~やだよう」



そう言いながらも須藤から荷物を半分持って歩き始めた。

俺はたまに思う。

澪ちゃんは俺の前で見せる笑顔と、須藤の前で見せる笑顔は全然違う。

もちろん、俺の前でもちゃんと笑ってくれる。

でも、アイツの前で笑う澪ちゃんはなんか違う。

本当に心から笑っているように笑う。

俺の中の何かがうずく。

嫉妬…か。

みっともないな。

そう思って俺は春斗の腕を掴んで音楽室に向かった。

春斗はなにも聞いては来なかった。