「おばさん!着物着せて~!」
リビングで洗濯物を畳んでいると、澪ちゃんがやってきた。
「あら、もうそんな時間?じゃあ着付けちゃいましょう」
そう言って私は澪ちゃんに浴衣を着せてあげた。
澪ちゃんは本当に可愛い。
まるで自分の子のよう。
澪ちゃんもあんなことがあったけれど、こんな風に素直でいい子に育ってくれてよかったわ。
「お祭りは、玲次と行くの?」
「ち、違うよ~!」
帯を締めながら私がそう聞くと澪ちゃんは少し焦ったように否定した。
その焦り方はもしかして…
「じゃあ彼氏でしょ?」
すると澪ちゃんは顔を真っ赤にした。
そして、小さく頷いた。
その姿はとっても可愛かったけれど、寂しくもあった。
私の息子の玲次は昔から澪ちゃんが大好き。
でも変なとこ不器用だから、澪ちゃんにはただの幼なじみとしてしか映っていないみたい。
あんなに大胆にアピールしてるのにね。
「どんな人なの?」
そう聞くと澪ちゃんは照れながらいろいろ話してくれた。
そんな澪ちゃんの顔は幸せそうだった。
澪ちゃんの話を聞いているうちに着付けが終わった。
「はい、出来た」
澪ちゃんは髪をお団子にしていて、浴衣は黒地に大きなムラサキの花が咲いている。
色白の澪ちゃんにはとても似合う。
「ありがとう!」
澪ちゃんはそう言って笑った。
そして『行ってきます』と元気よく出て行った。