「しんっじらんない!!」



あたしはイルカのぬいぐるみを抱いて、プンスカしながら一人で歩いていた。



「俺は悪くないんだってぇ~」



玲次は自分の右頬をさすりながら後ろから追いかけてくる。



「何が悪くないのよ!玲次がいきなり、キキっキスなんてしてくるから!!」



そう言ったら自分の顔が赤くなった。

そして玲次も同じく赤くなった。



「し、しかも写真まで撮られて…」



あたしはさっき右頬をイルカにキスされた。

そして、左頬を玲次にキスされた。

その瞬間、あたしの左手が思いっきり玲次の右頬にクリーンヒットした。

周りの調教師さんたちは唖然…

だってうちらのこと普通のカップルだと思ってたんだもん。

彼氏がほっぺにキスしただけなのに、彼女が平手打ちって…。

調教師さんたちが、あたしたちに悪いことをしたと思って、水族館の年間パスをくれようとしたが、丁寧にお断りした。

だって悪いのは事情を説明しなかったあたしたちだ。

そのかわりイルカのぬいぐるみと、あたしたちの3ショットの写真はいただいた。