ま、まずいとこを見られた。

気まずすぎる…。

田端さんが準備室から出て行って、あたしは高岡先輩と2人きりになった。



「…た、高岡先輩?」



田端さんが去った方を見ていた高岡先輩が、あたしの呼びかけに振り向いた。

そして無言であたしの方に歩いてきた。



「高岡せ…っ!」



その瞬間、あたしは先輩に抱きしめられた。

心臓がビックリするくらいドキドキと動いている。



「ちょっ!せ、先輩?」



多分今のあたしの顔は茹ダコよりも真っ赤だろう。

そして先輩はあたしの耳元で言った。



「…よかった…。無事で」



そう言われてやっと緊張の糸が切れた。

抱きしめられた先輩の温もりが心地よい。



「…全く。よくこういうのに絡まれる子だね」



ボソっと言われてん?と思う。

だって、先輩には1度、駅の前でナンパされたのを助けてもらった。

それだけだ。