最初にここに入ってきたときは思わずカッとなった。
澪ちゃんのワイシャツに手をかけている田端。
その近くには解けたネクタイ。
大体のことは想像が付いた…
と思っていたが、澪ちゃんの悲鳴と同時に田端が飛んだ。
そして澪ちゃんの最後の1撃によって、田端がダウンした。
「あ…えっと…俺、何しに来たんだっけ?」
思わずそう言ってしまった。
すると、さっきまでダウンしていた田端が俺に近づいてきて言った。
「お姫様を、助けに来たんだろ?」
そう言われて思い出した。
おぉ、そうだった。
あまりの衝撃に忘れるとこだった。
田端が準備室を出るとき、1度振り返って口を開いた。
「佐伯には、なんにもしてないから大丈夫」
そう言われてホッとした。
そして澪ちゃんの方に駆け寄ろうとした時、
「…アイツらのこと…よく見てやってくれ」
田端がそう呟いたのが聞こえた。
アイツ、ら?
澪ちゃんと?
誰…?
「な、なんだよ?」
俺がそう聞くと、田端が少し切なそうに笑って言った。
「頼んだ」
そう言って片手を上げて出て行ってしまった。
なんなんだ?意味わからねぇ。
その田端の意味に気づいたのは、まだ先のことだった。