暗く冷たい部屋で少女は一人、窓の外を眺めている。

 長い睫に縁どられた大きな瞳はまるでガラス玉のように美しく、けれども闇を宿し暗く沈んでいた。

 不意に風が少女の頬を撫でる。鼻腔を擽る自然の香りに誘われ振り向くと、普段は重く閉ざされている扉が僅かにだが開いていた。

 一歩を踏みさせば、ずっと憧れていた外の世界へ行くことが出来る。…少女は唇をきつく噛み締め、両手を胸の前でぎゅっと握り締めた。様々な思いが少女の中で交差する。

 まるでそんな少女を慰めるように胸元にあるネックレスが少女の手に優しく触れた。はっとして見やると、表情を緩め両手で優しくそれを包み込む。

 けしてそんな筈はないのだが、今ならば全てが赦される様な気がした。

 少女は一度祈るように目を瞑り、迷いを断ち切ると真っ直ぐに扉を目指す。その瞳は先程までと違い、強い光を宿していた。