「あのさ」
麻依に必死に作り笑顔を向けていると、鼻の頭をかきながら話しかけてきた優くん。
「保健室」
その単語だけを言葉にした。
保健室?
…ああ、手当してもらわないとだ。
「大丈夫、麻依についてきてもらうから!」
慌てて両手を振る。
それを見た麻依があたしと優くんをチラチラと交互に見ながら、
「…いや…あ、あたし次種目出るからさ!優くんよろしく!」
そう言ってあたしの背中をバンッと叩いて走り去って行ってしまった。
「え、え、えー?!」
待って麻依、と言った時にはもう麻依の姿はみえなかった。
さすがテニス部。
走るのが早い。

