「…1レーンの柚木さんと2レーンの松本くんは、えーと〜…リタイアということで…」
やっと入ってきた放送の声。
リタイア?
…そうなるよね…。
でもあたしはいいけど、優くんがリタイアなんてあたしが許さない。
助けてくれたのにあたしのせいでリタイアなんて…。
「…待ってください」
そう思っていると優くんが立ち上がって、放送委員の方に向かって大声で叫んだ。
「ゆ、優くん?」
驚きのあまり、周りのみんなもあたしも固まって優くんを見つめる。
「…一回立てる?」
上から降ってくる優くんの優しい声。
それとともにあたしの目の前に差し出される、優くんの右手。
これにつかまって立てってことだよね?

